新人保育士さんへ、園ナースから――一緒に子どもたちを守るために知ってほしいこと

園ナースの日々と小さな気づき

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新人保育士さんが来る季節に、思うこと

四月になると、保育園に新しい風が吹きます。真新しいスーツで出勤してくる新人保育士さんたち。緊張した表情で、でも目をきらきらさせながら、子どもたちのそばに立つ姿を見るたびに、わたしは毎年、初心に返る気持ちになります。あの頃のわたしも、こんなふうだったかな、と。

保育士という仕事は、子どもたちの成長を間近で支える、とても豊かな仕事です。同時に、体力的にも精神的にも、決して楽ではない仕事でもあります。特に最初の数年間は、覚えることの多さ、判断の難しさ、保護者対応の重さに、圧倒されることもあるでしょう。

そのなかで、「子どもの体調」に関することは、新人保育士さんにとって特に不安を感じやすい分野のひとつだと思います。「この子、熱があるかな?」「このけが、どのくらい深刻?」「今すぐ園ナースを呼ぶべき?」――判断に迷う場面は、毎日のようにやってきます。

だから、園ナースとして新人保育士さんに伝えたいことがあります。「わからなくていい」ということです。最初から何でも判断できる必要はない。大切なのは、「わからないとき、どうするか」を知っていること。そして、迷ったときに気軽に声をかけられる関係性を、園ナースとの間に作っておくことです。

「なんか変」を、そのまま伝えてほしい

新人保育士さんに、まず伝えたいことがあります。それは、「気になることがあったら、そのまま言葉にして伝えてほしい」ということです。「なんか変な気がするんですけど、気のせいかもしれないので……」という遠慮は、必要ありません。気のせいかどうかの判断は、わたしたち園ナースが一緒に考えます。新人保育士さんがすべきことは、「なんか変」と感じたことを、そのまま声に出すことだけです。

保育の現場では、経験豊かな保育士さんほど、こうした「なんか変」のセンサーが鋭くなっています。でも、それは最初から備わっているものではなく、子どもたちと向き合い続けるなかで少しずつ育まれるものです。新人保育士さんのセンサーは、まだ育ちかけの段階。だからこそ、自分の感覚に自信が持てなくても、それを「なかったこと」にしないでほしいのです。

実は、新人保育士さんの「気になる」が、ベテランが見落としていたことを捉えていた、という場面を、わたしは何度か経験しています。先入観がない分、フラットに子どもを見られることがある。「この子はいつもこうだから」という思い込みがない分、変化に気づきやすいこともある。新人であることは、観察者としての弱さではなく、ある種の強みでもあるのです。

体調確認の「基本の型」を持つ

子どもの体調を確認するとき、何を見ればいいのかわからない、という新人保育士さんは多いと思います。だから、まず「基本の型」を持つことをお勧めしています。難しいことではありません。顔色・目の様子・機嫌・食欲・活気の五つを、意識的に見る習慣をつけることです。

顔色は、青白くないか、赤みが強すぎないか。目は、いつもの輝きがあるか、充血や目やにはないか。機嫌は、いつもより荒れていないか、逆に静かすぎないか。食欲は、給食やおやつをどのくらい食べたか。活気は、いつものように動き回っているか、ぐったりしていないか。この五つを意識するだけで、体調変化への気づきがぐっと増えます。

体温計で測る前に、まずこの五つを見る。数字が出る前に、「この子は今どんな状態か」を自分なりに感じてみる。そして体温を測り、数字と照らし合わせる。その順番を習慣にすることで、「数字だけで判断する」ではなく「子ども全体を見て判断する」という感覚が育っていきます。

「基本の型」は、最初はぎこちなくていい。意識しないとできなくていい。毎日繰り返すうちに、やがて意識しなくても自然にできるようになります。その積み重ねが、保育士としての観察力の土台になっていきます。

けがの対応、保護者への報告――新人保育士さんが悩むこと

新人保育士さんからよく聞かれることのひとつが、「けがをさせてしまったとき、どうすればいいですか?」という問いです。子どもが転んで泣いたとき、友だちとぶつかって頭を打ったとき、砂が目に入ったとき……。その瞬間の対応と、その後の保護者への報告が、新人保育士さんにとって大きなプレッシャーになることがあります。

まず、けがをした瞬間の対応についてです。大切なのは、「まず子どもに向き合う」ことです。自分が慌ててしまうと、子どもはもっと怖くなります。「大丈夫?見せて」と落ち着いた声で声をかけ、けがの状態を確認する。出血があれば清潔なタオルや手袋で押さえ、園ナースか先輩保育士さんを呼ぶ。その流れができていれば、最初はそれで十分です。

「自分で全部対処しなければ」と思わなくていい。助けを呼ぶことは、弱さではありません。子どものために最善の対応をするために、必要な人を呼ぶことは、正しい判断です。特に、頭を打ったとき、出血がひどいとき、子どもが意識を失いそうなときは、すぐに園ナースか先輩を呼んでください。そのためにチームがいるのです。

保護者への報告は、「正直に、丁寧に」

けがをさせてしまったとき、保護者への報告を怖いと感じる新人保育士さんは多いと思います。「怒られるんじゃないか」「信頼を失うんじゃないか」という不安は、自然な感情です。でも、保護者への報告において最も大切なことは、「正直に、丁寧に伝える」ことです。

「転んで膝を擦りました。すぐに手当てをして、今は落ち着いています」という報告は、保護者にとって必要な情報です。隠したり、曖昧にしたりすることは、後で発覚したとき、より大きな不信感につながります。小さなことでも、きちんと報告する習慣が、保護者との信頼を積み上げていきます。

報告の基本は、「何が起きたか」「どのような状態だったか」「どう対応したか」「今の状態はどうか」の四点です。これを、感情的にならず、でも温かみを持って伝えることが大切です。「申し訳ありません」という謝罪も大切ですが、それと同時に、「こう対応しました」という内容をしっかり伝えることで、保護者は「きちんとケアしてもらえた」という安心感を持ちます。

ひとりで抱え込まない、という大切さ

新人保育士さんが、けがや体調不良の対応でつらくなるとき、多くの場合「ひとりで抱え込んでいる」状態になっています。「自分がきちんとしていれば、けがさせなかった」「もっとちゃんと見ていれば、気づけた」という自責の気持ちが、じわじわと重くなっていく。

でも、保育の現場で起きることは、一人の保育士さんの責任ではありません。子どもは、予想もしない動きをします。どれだけ注意深く見ていても、避けられないことはあります。大切なのは、起きてしまったことをどう対応するか、そして次にどう活かすかです。自分を責め続けることは、次の対応の質を下げることにつながりかねません。

失敗したと感じたとき、園ナースや先輩保育士さんに話してほしいと思います。「あのとき、こうすればよかったのかな」という問いを、一人で抱えないでほしい。一緒に振り返ることで、次への学びになる。その場を作ることも、園ナースの役割だとわたしは思っています。保健室は、子どもだけでなく、保育士さんにとっても「ちょっと話せる場所」でありたいと思っています。

「できた」を、積み重ねていく

新人保育士さんの成長を間近で見ていると、その変化がとても嬉しく感じられます。最初は「どうしたらいいですか?」と聞いてばかりだった保育士さんが、半年後には「こうしようと思いますが、確認していいですか?」と言えるようになる。一年後には、「こう判断しました」と自信を持って報告してくれるようになる。その成長の軌跡を見ることが、一緒に働く者としてのわたしの喜びのひとつです。

できないことが多い最初の時期、「できた」という経験を積み重ねることが、自信の土台になります。体温を正確に測れた、けがの手当てをスムーズにできた、保護者への報告がうまくできた……。小さなことでいい。「今日はこれができた」という感覚が、明日への力になります。

園ナースとして、新人保育士さんの「できた」をちゃんと見ていたい、そして伝えたいと思っています。「さっきの対応、よかったよ」「あの報告の仕方、すごく丁寧だったね」という一言が、どれだけ励みになるか。わたし自身が新人だった頃に、先輩からもらった言葉の温かさを思うと、それを次の人に渡していきたいという気持ちが自然と湧いてきます。

保育士さんの「しんどい」を、見逃したくない

園ナースの仕事は、子どもの健康を守ることが中心です。でも、子どもたちのそばで日々働く保育士さんたちの健康も、わたしは気にかけています。保育という仕事は、体も心も使う仕事です。子どもたちの笑顔のために全力を尽くしながら、その疲れをうまく表に出せずにいる保育士さんを、これまで何人も見てきました。

特に新人保育士さんは、「弱音を吐いてはいけない」「もっと頑張らなければ」という気持ちが強くなりがちです。周りの先輩たちが忙しそうにしているのに、自分の辛さを口にするのは申し訳ない。そういう遠慮が、しんどさを内側に溜め込ませてしまいます。

体の不調として出てくることもあります。頭痛、胃痛、眠れない、食欲がない……。子どもの心身症と同じように、大人も、心の疲れは体に出ます。保健室に来てくれる保育士さんが、「なんか最近頭痛が続いていて」と言ったとき、わたしはいつも少し立ち止まって、「最近、どう?仕事のこと」と聞くようにしています。

保育士さんのセルフケアを、一緒に考える

保育士さんが自分自身を大切にすることは、子どもたちのためにもなります。疲弊した状態で子どもの前に立つことは、保育の質を下げるだけでなく、保育士さん自身を傷つけます。「自分を後回しにすることが、プロとして当然」という考え方は、長い目で見ると持続可能ではありません。

セルフケアといっても、難しいことではありません。睡眠をしっかりとること、食事を抜かないこと、休憩時間に少しでも体を休めること。当たり前のことばかりですが、保育の現場では、これらが後回しになりやすい。「子どもが起きているのに、自分だけ休めない」という感覚が、休むことへの罪悪感になることもあります。

でも、飛行機の緊急時の案内で「まず自分の酸素マスクをつけてから、隣の人を助けてください」と言うように、自分が安定していることが、人を助ける前提になります。保育士さんが元気でいることが、子どもたちに良い保育を届けることにつながる。そのことを、職場全体で大切にしてほしいと思っています。

「助けて」と言える職場をつくるために

「助けてください」と言える職場環境をつくることは、園ナースの力だけではできません。でも、保健室という場所が「しんどいときに立ち寄れる場所」として機能することで、少しだけその文化を育てることができると思っています。

新人保育士さんが「ちょっと聞いてもいいですか」と保健室の扉をノックしてくれたとき、「もちろん」と答えられるでいたい。子どもの体調のことだけでなく、仕事のことで悩んでいることも、話してくれていい。答えが出なくても、ただ聞くだけでいいこともある。

保育士さんが笑顔でいられることが、子どもたちの笑顔につながる。その当たり前のつながりを、職場全体で大切にしていきたい。園ナースとして、子どもの健康を守りながら、一緒に働く仲間の健康も気にかけ続けること。それも、保育と看護のあいだに立つ者の、大切な役割のひとつだとわたしは思っています。

来年の春も、また新しい風が来る

四月が来るたびに、保育園に新しい保育士さんが加わります。緊張した顔が、少しずつほぐれていく。子どもたちに名前を覚えてもらって、嬉しそうに報告してくれる。はじめて一人で保護者対応をして、終わった後にほっとした顔で「できました」と言いにきてくれる。

そういう瞬間を、来年も、その次の年も、一緒に迎えられたらいいと思っています。新しい保育士さんたちが、子どもたちと一緒に育っていく場所。その場所を、園ナースとして支え続けることが、わたしのひとつの願いです。

保育と看護のあいだで、子どもたちを守りながら、子どもたちを守る人たちも守る。その広い意味での「ケア」を、これからも大切にしていきたいと思っています。新人保育士さんへ、いつでも保健室においでください。一緒に、この仕事の喜びを見つけていきましょう。

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